ARTWORKS

日本国内旅行の風景画制作の前半を集めたコレクション。
旅行風景画の本格的な制作活動の当初、暗中模索の旅の日々。ひたすら移動と制作の繰り返しと、地道な試行錯誤を重ね、純粋さが表れる「迷走」の記録。

 山の向こうに日が沈んだばかりの国道。まん中の黒っぽい物体は停車中のトラック。
 残雪がまばらな光をわずかに反射しているようで救われる思い。暗くなったら風景は見えなくなり、絵も描けないから。■

 旅の風景画制作は、連日屋外作業。とくに夏場はよく日焼けしていた。能登半島でこの絵を描いたあと、ドライブの途中に市民風呂があり、まだ午後三時くらいだったが、汗まみれの体を洗い流し、疲れをいやした。日焼けに温泉湯が沁みる。
 日本国内にはこうやって素晴らしい風呂屋がそこかしこにあり、屋外絵画制作業務で砂塵と汗にまみれる全国行脚の旅人にとって日本はさながら清流温泉癒し列島に思える。
 風呂屋を出ると上半身はだかのまま車に乗り込んで富山に走った。ハダカドライバーにとって日本の自然の風はことのほか優しい。気がつけば背中にでかいハエ(日本の二倍)びっしり百匹のオーストラリアとは大きく異なる。
 夕方、富山市街地に入り繁華街の広場の脇に車を停め、たまたまそこにいた「スターウォーズ・エピソードナントカ」の初日上映入場待ち約百人の衆目の中、ようやくTシャツを着た。よく見ると、そこには異星人たちも正しく行列に並んでいるではないか。いや、単なる物好きなコスプレ富山県人か。でも、わざわざ遠出してトンネルの絵描いて喜んでいるよりよっぽど正常でマシかも。
 富山のダースベーダー(の格好をした人)も、クルマの横で屈伸運動や背伸びしながらタバコをふかしている赤黒日焼け路上生活者の俺を見ていた。ライトサーベルこそ出さなかっけど、明らかに不審者を見る様子で、じっと身構えていたようだった。■

 秋田か山形の日本海海岸で、波打ち際を背にしている。
 高さが一メートルくらいの草が広く生い茂って向こうは林。すごーく広い場所。まもなく夕暮れで、実際こんなふうに人が見当たらなかった。遅い午後の風が吹いて、草原が風でザアアアーッと波のように揺れ動くのが幻想的に見えた。  東北地方の日本海側はほかにも風情があって好きな海岸が多い。東北での大きな発見は「つけ麺」だった。それまで東北地方でごく一般的だとは知らなかった。その後五、六年してから全国的に流行したようだった。
 入った店にはつけ麺に「大・中・小」が予め設定されている。メニュー表は無く、マジックペンで紙に書き壁に貼り付けてあるだけ。何ということのない国道沿いのガテン系もしくはタクシー・ドライバー御用達のラーメン屋。麺もスープもうまくて、店員さんもテキパキとして、若い職人の真っ白とはいえない制服も店内のヨゴレ具合も自然体で、湯気と手垢とスープのシミで古びた「サザエさん」単行本も、何年前のかよく分からんマンガ雑誌も、なんか装いも気取りも無い。
 食べ終わり、片付けやすいようカウンターの上の段に食器を載せると、思いがけず、常連さんにいつもそうしているがごとく、厨房の料理人は愛想良く「ワカメ入れましょか!」と言って、そのドンブリの残ったスープの中にトングでワカメをドサッと入れて、スープをザバッとかけてかき混ぜ、ハイヨッと客に差し戻し、ワカメスープで最後を締めくくるようになっていて、これもうまくて俺はもう感動して、翌年もこの店に行った。
 東北地方は福島の喜多方ラーメンも有名なようだが、他にも美味いラーメン屋がたくさんあるようだった。■

ページの先頭へ